黒須田 守
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競馬コラム
◆勝負師(ジョッキー)の肖像
2008/07/23 17:00
◆我ら競艇好き――佐藤哲三
僕は今、蒲郡競艇場にいる。競艇のビッグレース、SGオーシャンカップが開催されているのだ。競艇月刊誌の編集長である僕は、SGレースのたびに開催競艇場に1週間へばりついて取材にあたっている。肉体的にはもちろん、精神的にもきつい……ただし、精神的に、というのはほとんどが「舟券が当たらない」というストレスの蓄積である。
さて、先ほど記者席を出てぶらついていたら、イベントステージに見たことのある顔が3つ並んでいた。目をこらして見ると……JRAのジョッキーではないか。佐藤哲三、福永祐一、川田将雅の3騎手が、予想イベントに出演しているのであった。こんなところでジョッキーと遭遇すると、さすがに驚く。
聞くところによれば、彼らはボート部なるものを結成して、競艇を楽しんでいるとの由。というより、ボート部の存在は最近知ったのだが、この3人、特に佐藤哲三が競艇好きであることは、はるか昔からよく知っていた。
初めて彼にインタビューしたのは、もう10年近くも前のことになるが、もちろん競馬の話を聞きに行ったのに、気づけば競艇用語が二人の間を飛び交っていた。テープが止まったあとには、もちろん競艇談義である。
その取材の帰り際、佐藤は「今日はこのあとどうするの?」と聞いてきた。取材場所は栗東トレセンの騎手独身寮。僕は取材後は、そのまま帰京する予定で、その旨を伝えた。
「そうか……きょうは琵琶湖ではやってないもんね」
栗東トレセンのすぐ近くに、琵琶湖競艇場がある。そして、佐藤は開催日程を完全に把握しているのであった。
それから4年後、僕は佐藤と再びインタビューの場で顔を合わせていた。当たり前だが、競馬の話だ。しかし……僕らの最初の話題は、競艇に関することだった。その直前に、競艇界ではちょっとした事件が起こっていた。それは、勝負師の意地、哲学という部分にも関わってくることであり、僕は同じ勝負師である佐藤の見解が知りたかったし、佐藤もその話を誰かとしたかったのではないかと思う。その部分は、もちろん原稿に使うわけにはいかなかったが、僕はその話だけで仕事が終わったような気になったものだ。佐藤も、同様だったと信じる。
佐藤はとにかく競艇ツウであり、その分野ではジョッキーのなかではナンバーワンだろう。それは単純に言ってしまえば、「競馬界一の競艇好き」という話でしかないのかもしれない。しかし、佐藤のこれまでの騎乗ぶりを見れば、競艇に触れ、水面で繰り広げられるバトルに熱中することで、勝負師とは何かというポリシーを確固たるものとし、ファンのために戦う男になれている気がする。先ほどのイベントで、舟券をどう買うかと問われて、佐藤はこう言った。
「まず、展開を読みますね」
競馬も競艇もレース。ともに展開というものが大きく関わってくる。その部分で、佐藤の競艇好きは自身の騎乗にも通じる。職人技とも言うべき穴馬の激走を演出する技術は、もちろん彼が本業で努力を重ね、血のにじむような思いで身につけたものでありながら、競艇好きであることが味付けをしていると考えていいはずだ。……まあ、舟券を買っている間は、そんなこと考えてもいないだろうけど。
佐藤哲三は、今日、どんな舟券を買っているのだろうか。そして、それが今週のレースにどう結びつくのだろうか(大負けしていたら、競馬で取り戻そうと必死になるかも)。ちなみに僕は、絶賛惨敗中である。
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