田端 到
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競馬コラム
◆王様の馬券入門虎の巻
2008/03/19 17:00
◆その18 ショウナンアルバの血統物語
スプリングSの登録馬にウォーエンブレム産駒が2頭います。ショウナンアルバとキングスエンブレム、どちらも有力候補の1頭でしょう。
ウォーエンブレムはアメリカの二冠(日本で言えばダービーと皐月賞)を制し、社台グループが鳴り物入りで導入した種牡馬です。しかし、予想外の事態が起こりました。いざ種付けしようとしたら、牝馬に興味を示さないことが発覚してしまったのです。
初年度産駒はわずか4頭にとどまりました。その後、関係者の懸命な努力により、2年目は33頭の産駒(血統登録数)を得ます。ほとんどは社台グループの生産馬でした。
種付けしない種牡馬では、よその牧場の依頼を受けるわけにはいかないので、自分のところの繁殖牝馬をウォーエンブレムの前に連れてきて、その中で彼が興味を示した牝馬にだけ種付けするという方法を採ったのです。
こうして2年目に生まれた05年産の33頭は、今となれば奇跡に近いものだったのかも知れません。3年目以降、彼はまた種付けに興味を失い、産駒は5頭→0頭→0頭と減少をたどります。
そんな2年目の産駒こそ今年の3歳馬であり、なかでもショウナンアルバは「社台グループ以外の牧場から生まれた、この世代唯一の中央登録馬」です。
大事な牝馬を空振り覚悟で種付けに連れて行くからには、何が何でもウォーエンブレムを付けたいという生産者か馬主のこだわりがあったはずで、生産者の桑田牧場の話を聞いてみたい。たぶん、どこかが記事にするでしょう。
ショウナンアルバの血統表を見ると、こだわりの理由のひとつが推測できます。それはこの馬がブリガディアジェラードの5×3という珍しいインブリードを持っていること。
ブリガディアジェラード、愛称BG。1968年生まれ、18戦17勝のイギリスの超スターホースです。
デビューから連戦連勝を重ね、2000ギニーではミルリーフ、マイスワローとの3強対決を3馬身差で優勝(便利な世の中になったもので、この伝説の名勝負は某投稿動画サイトで見ることができます)。ミルリーフはこの後、イギリスダービー、キングジョージ、凱旋門賞などを制します。
一方、マイル路線を歩んだBGはその後も無敗の15連勝を続けます。苦手の道悪にあえぎながらの勝利や、12ハロンのキングジョージに挑んでの勝利など、困難を次々にクリアする姿にイギリス中の人気が沸騰していったと聞きます。
しかし、リボーの16連勝に並ぶタイ記録がかかった1戦で、ついにブリガディアジェラードの無敗伝説に傷が付く。ひとつ年下のイギリスダービー馬ロベルトが2100mをハイペースで逃げ、そのままBGを抑えて逃げ切ってしまったのです。この1戦でロベルトはすっかり悪役扱い。今でもイギリスでは人気がないそうです。
種牡馬になってからもライバルとの命運が分かれました。ミルリーフやロベルトが大成功、世界に父系を拡げていったのに対して、BGはさっぱり。直系のサイヤーラインは今ではかすかに残るのみ、風前の灯火です。
それでもウォーエンブレムの母父ロードアットウォーはBGの直系子孫で、馬名の「ウォーwar」もBGから連なる戦争言葉です。ウォーエンブレムには、血統にも名前にもBGの存在が刻印されています。
そして、そんな貴重な名馬ブリガディアジェラードの血を、インブリードで持つのがショウナンアルバなのです。
30年以上の歳月を経て、遠い日本で存在を主張するブリガディアジェラード。その前に立ちはだかるのは、なんということか、またしてもロベルトです。
ひとあし先に皐月賞の主役候補となったマイネルチャールズや、今週のスプリングSでライバルになりそうなスマイルジャック、アイティトップ。これらはみなロベルトの直系子孫です。イギリス人の競馬好きの知り合いがいたら、ぜひ教えてあげてください。今年の日本のクラシックはBG対ロベルトの代理戦争になるかも知れないんだよ、と。
36年前の因縁の敗戦を、ショウナンアルバは、ブリガディアジェラードは振り切れるのでしょうか。
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